読了本

春に来る鬼 ~骨董店「蜻蛉」随縁録~ (B's-LOG文庫)

春に来る鬼 ~骨董店「蜻蛉」随縁録~ (B's-LOG文庫)

まだまだ海のものとも山のものともつかぬ新創刊レーベルB's-log文庫、第1回配本のなかの一冊にして他とはちょっと毛色が異なる作品。民俗学や伝統工芸・伝統芸能を題材にとり、オカルトで風味づけしたなかなか面白い趣の物語で、雰囲気は渋く地味めだけれどキャラが立ってて文章がうまく表現力もあり、とても楽しく読んだ。由多加姐さんもかっこいいが、終盤の淳之介の舞台には私まで思わず泣きそうになってしまったよ。物語的にはやっと序章開幕という感じなので続きが楽しみ。
ただ過去の因縁話が終章前にどかんと挿入されてるせいで、本編現代パートのクライマックスが本の真ん中あたりに来てしまっている。このおさまりの悪さはかなり惜しいと思う。過去編を断章として現代編の合間に挟みこみ、同時に盛り上がってく構成にすればよかったのでは。先祖伝来のものらしいトンボ玉の剣簪が過去パートでああいう使われ方をしてるってことは、瑞穂も今後「蜻蛉」の二代目たちとともにサイキックな活躍をするのかなあ……。