読了本

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

日本ファンタジーノベル大賞受賞作の文庫化。著者のデビュー作だが『きつねのはなし』のあとに読んだら内容の違いにたいそう驚いた。といっても文章や作風はそのままに扱う題材だけ変えてる、そんな印象ではある。異性と縁のない男のひがみとプライドが生んだ誇大妄想みたいな主人公の語りはひどくリアルで身につまされると同時に緻密な計算が感じられるが、インテリっぽい硬さはなくむしろまろやかで、とてつもなくユーモラスかつ幻想的だ。この人の作品の舞台はいつも京都なのかな? 鍾馗みたいな風貌に乙女の心を宿した高藪のその後が気になる。

かはたれ (福音館創作童話シリーズ)

かはたれ (福音館創作童話シリーズ)

家族のいない子河童の八寸はひと夏の間、猫の姿で人間の世界へ修行に出されることになった。野良として人間を観察するうち、母を亡くしたばかりの女の子・麻と出会って一緒に暮らしはじめるが……。まったりと話が進んでいただけにクライマックスの緊張感はただごとではなく、ちょっと泣けてしまった。舞台は鎌倉で作者も鎌倉在住だそうだが、モデルになってる土地があるのだろうか(物語の定石としてはみんな本当にあったことだったりするのよねー)。先月「たそかれ」という続編も出たらしい。