読了本

新耳袋―現代百物語〈第8夜〉 (角川文庫)

新耳袋―現代百物語〈第8夜〉 (角川文庫)

巻ごとに色々な試みがあるのも楽しみのひとつ。この巻では第三章以降のカウント表記をタイトルからはずしている。第○話という文字がない、ただそれだけのこと。なのに残り68話を本当に一気に読んでしまった。いつもはポツポツと空いた時間に数話ずつ読んでいたし、まとめて読みたいと思うほど引き込まれることもなかったから「どうぞ一気に――。」といわれてもねー、なんて軽く考えていたのだが。いや驚いた。話数表記は心理的なスピード抑制になってたのかね?

『ニタイとキナナ』ISBN:4883792307者の存在はとても面白かった。縄文人に対して貧相なイメージしか持ってなかった私には高室漫画はすごく刺激的で、もっとその世界を広く深く知りたくなってくる。これは対談型式の新書なのでとっつきやすかった。縄文遺跡から出土するヒスイは分析すると100%糸魚川産らしい。それが各地から出るってことは必ず行き来する人がいたわけで。他にも黒曜石やアスファルトなど、さまざまな品が行きかっていたことが分かっているそうだ。
ただヒスイなんかは後世まで残るけど、産砂とか言伝なんてのは掘っても出てこないはず。失われたのかもともと無いのかのラインを越えるのは確かに容易じゃないだろう。考古学が進化してもっといろんなことが分かるといいな。まだ全貌があきらかになってないどころか半分も掘ってない三内丸山遺跡には大期待。まだまだ驚くようなものが埋まってるかもしれないもんね。
ところで南太平洋で縄文土器が発見されたことなどを交えて海の商人の存在を語り合うくだりがあるのだが、ネットで調べててガセビアだったバヌアツ縄文土器というのを発見。あらら……。旧石器捏造事件とかも記憶に新しいけど(そういえばこの本は事件以前に出たものだ)、発見の信頼性と想像の妥当性がうまく合わさらないと道に迷ってしまうことにもなりかねないなあ。