読了本

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

金田一がたまたま骨休めに訪れた山村で血塗られた惨劇の幕が開かれる。先がまったく分かっていないと無性に怖いものだが、横溝さんはけっこう気前よく手の内を明かすほうで(これから何人死ぬ……とか、これが実は深い意味を持っていたのであった……とか)恐ろしいシチュエーションが揃っている割に意外とそういう意味での恐怖感は薄いのだった。小説版より映像化作品のほうがよりホラーっぽいのは地の文で予告するようなことができないからなのかもしれない。で、あまり怖くないので冷静に謎解きを楽しめるわけである。冒頭でこの地域に伝わる奇妙な手鞠唄が紹介され、ああこれからこの通りに殺人が起こるんだな……と思わせておいて変化球を投げてきたり。悲哀のうちに終わらせないエピローグも心にくいばかりだった。最後の一文などは一緒に絶句してしまったよ。