読了本

最後の願い

最後の願い

演じる役の行動や心の動きについて常に考えている役者だからこそ見抜ける、不可解なできごとの裏に隠された真実。“日常の謎”ミステリの書き手として定評のある光原百合だが、今回は蓮っ葉な女性キャラたちや際どいネタなども盛り込んであるのがちょっと意外に思えた。でも全体的にはいつもの光原節全開、オムニバス型式なので話が進むごとに面白くなっていく。「彼が求めたものは…」が秀逸。ラストシーンのアレも印象的だった。それにしても口では文句ばかり言いながらいそいそと協力する橘は可愛いやっちゃなー。

美食探偵 (講談社文庫)

美食探偵 (講談社文庫)

舞台は文明開化の日本。洋行帰りの文士・弦斎がホームズばりの推理で難事件を解決する歴史ミステリ。新選組の後日談や洋食のうんちくを盛り込んだりとなかなか美味しい一冊。火坂作品は初めて読んだが好みの文章を描く人だ。軽さもあって読みやすいが他の時代小説もこんな感じなのかしら。作中で執筆中の「食道楽」は実在の作品だそうで、当時は新婚家庭の必需品と言われたほどの人気を博したとか。多嘉子とのロマンスがどうなるのか気を揉んだが、長谷部さんの解説にちゃんと記述があった(痒いところに手がとどくようだなあ)。