読了本

暁のひかり (文春文庫)

暁のひかり (文春文庫)

藤沢周平のダークサイド短編集。というのもほとんどの話が救われない結末を迎えるので……作中の文で言えば“胸をひたひたと満たしてくる哀しみ”(「おふく」)を覚えるばかり。別に厭な印象はないんだがどうにも淋しくなる。「馬五郎焼身」のラストには仰天した。そういえばそういうタイトルだった、と。「しぶとい連中」は唯一ハッピーエンドらしき話で、前半は得体の知れない薄気味悪さがあるのだが、ある夜を境に一変する。藤沢周平の描く濡れ場って何か妙に可愛くて好きなんだよな。どぎつくないから想像する余地があるし。「冬の潮」での孤独感を表す情景描写が秀逸だった。