これほどエンタテインメントな書評本もあんまりないと思う。おふたりの舌戦だけでも楽しめるうえ、面白そうな本まで見つけられるという優れもの。これまでも気にはなっていたけどあらためて読書意欲をそそられた本がたくさん。
米村圭伍『影法師夢幻』、
奥泉光『鳥類学者のファンタジア』、
古川日出男『アラビアの夜の種族』、
平安寿子『グッドラックららばい』、
飛浩隆『グラン・ヴァカンス』『象られた力』、マーティン『
七王国の玉座』、
古橋秀之『
IX(ノウェム)』、
荒山徹『十兵衛両断』、
ヒレンブランド『
シービスケット』、
沢村凛『瞳の中の大河』、イーリイ『ヨットクラブ』、
スタージョン『不思議のひと触れ』、
鷺沢萌『ウェルカム・ホーム』、戸松淳矩『剣と薔薇の夏』など……楽しみがまた増えた。
まあ内容は相変わらずというか、マンネリ気味というか。そういうのを楽しむシリーズではあるのだけど、なんだか一話ごとの密度が薄くなってきてるような気もする。以前はもっとひねってなかったか? 「
文三の恋人」あたりはこれで終わりじゃなくて後々に繋がってくならいいのだが。師匠もかわいそうだしさ。いちばん驚いたのが短銃をぶっぱなす東吾だ。時代はどんどん動いているのだなあ。いよいよ作中でも
明治維新を迎えるのだろうか。「手妻師千糸大夫」でのジュニアたちの活躍は頼もしかったが、血の繋がった兄弟間の恋愛フラグが立ちつづけてるのがなんともやきもきさせられる。