読了本

柳生忍法帖(上) 山田風太郎忍法帖(9) (講談社文庫)
柳生忍法帖(下) 山田風太郎忍法帖(10) (講談社文庫)
柳生忍法帖 上下』山田風太郎講談社文庫、1999)。
一気に読了。だって止めようがないもんね。冒頭から度肝を抜かれる。何度読み返しても凄絶さに歯を食いしばらずにはいられない。凄まじいばかりの表現力だ。会津に巣食う大悪人どもの非道にいたってはもう、山風は鬼か夜叉かと。花地獄・雪地獄での残虐ぶりはひたすら恐ろしいけれど、「女人袈裟」や「南船北馬」での禅僧たちの死に様には心がしんとなる。“絶体絶命の窮地”が何度もひっくり返される展開も見事というほかない。そして十兵衛をとりまく女人たち。こんな女いねーよと思わされる時代小説は世に多けれど、この作品にいたってはひとりもそういうのがいない。圧巻はおゆらだ。なんかねー、堀の女たちが互いに嫉妬しあって十兵衛を困らせるシーンも可愛くて好きなんだけど、終盤のおゆらはもっと好きだ。ラストの一文がなんとも泣かせる。『戦中派動乱日記』であんなにもあからさまだった女性への蔑視はどこ行っちゃったんだ?って感じ。