読了本

すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT) 野生馬の谷 (上) エイラ 地上の旅人(3) QED 竹取伝説 (講談社ノベルス)
『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア浅倉久志訳(ハヤカワ文庫、2004)。
南国の海が見せる不思議なまぼろしは、けだるげでどこか懐かしく、小悪魔的だ。語り手の「わたし」の受け止め方が気持ちいい。

『野生馬の谷 上』ジーン・アウル/佐々田雅子訳(ホーム社、2004)。
宇野亜喜良の描くエイラがすごく可愛い。そして若い! 幼いと言ってもいい。でもそれで原作どおりなのだ。過酷な生活と経験から当時(原始時代)の人々は今とは比べものにならないほど早く、心も体も老成してしまう。旧版の中村訳だとエイラはもっと落ち着いた大人っぽいイメージだったから、イラストとのギャップに少々とまどったりもする。佐々田訳にはほとんど違和感がないが、用語が旧訳と変わっていてこれまたちょっととまどう。

QED 竹取伝説』高田崇史講談社ノベルス、2003)。
今回は歴史の謎解き部分より事件の謎解き部分のほうが面白かった。「竹取伝説」のほうは牽強付会な感じがなきにしもあらずか。いくら言霊信仰を強調されても、無理のある言葉遊びにしかみえないな。あとタタルが事件関係者でもないのに現場に乗り込んできて「さて」と言い始めるのはなんなのだろう。安楽椅子探偵でいいじゃないか。最近の彼はちょっと行動が謎だ……以前とは別の意味で。