読了本・コミックス

『アンダーザローズ 1 冬の物語』船戸明里幻冬舎コミックス、2003)。
英国ヴィクトリア朝の光と影。この物語の空気は森薫『エマ』のように気持ちよくもないし、ロマンチックでもない。ただひたすら重苦しく歪んでいる。何かが狂っている。緊張感で吐き気さえしてきそうだ。船戸さんは人間の性質の根本が悪であることを描こうとしているのだろうか? 可愛いもの、優しいもの、温かいもの……それらの人生の喜びすべてが否定されていきそうで怖い。いや、怖いものみたさで眼が離せないというべきか。同時代を描いたまったく相反するドラマが同時期に日本で連載されているというのは不思議なものだ。ただ終盤でライナスをためらわせるなら、冒頭で馬を撃ち殺して動揺する事も無いふうに描いたのは失敗だったのではないかなと思った。キャラがうまく繋がらない感じ。

『春告小町 4』山口美由紀白泉社花とゆめコミックス、2004)。
最終巻。愛の力は偉大だ。時空をも越えてしまう。ふくふくと柔らかいヒロインが好きだったので終わってしまって淋しい。すっかり所帯じみて「おかみさん」になったお春も見てみたかった。しかし……よりにもよって寺でかよっ……! 旦那はまったくもってTPOを知らぬヤツ。