読了本

文学刑事サーズデイ・ネクスト〈1〉ジェイン・エアを探せ! 『文学刑事サーズデイ・ネクスト 1 ジェイン・エアを探せ!』ジャスパー・フォード/田村源二訳(ソニー・マガジンズ、2003)。
「リテラテック」という“文学にまつわる犯罪”を扱う特殊警察の女刑事が主人公のコミカル・アクション。舞台はパラレルワールドのイギリスで、クリミア戦争がいまだに続いていたりする。庶民の娯楽としてはテレビドラマよりも演劇や文学の人気がだんぜん高い。なんたってシェイクスピアの正体をめぐって人々が口角泡を飛ばして議論する世界だ。パソコンは発明されていない変わりに小説の中に入り込める「文の門」のような機械があったりもする。
シリーズ第一巻でサーズデイはシャーロット・ブロンテ作『ジェイン・エア』を守るため天性の凶悪犯アシュロン・ヘイディーズを敵にまわして戦う。英米でサーズデイの活躍が熱狂的に支持されたということは、みんなよほど『ジェイン・エア』のラストが不満だったんだろうか……と思ったらどうやら逆(『ジェイン・エア』を読んだのはもうずいぶん昔なのでラストを忘れてしまっていた)。彼女がいなかったらあの名作は生まれてなかったかもしれないのだから。時間を自由に移動できて、いつも絶妙のタイミングで登場するサーズデイの親父さんがなんか可愛くて好き。装丁も面白い。