読了本・コミックス

『黒男』あとり硅子新書館ディアプラスコミックス、2001)。
本屋さんを10軒まわって見つからなかったらネット書店で、と思ってたら10軒めで発見して小躍り。あとがきにも「Dear+に載せていただくのが申し訳ないくらいぬるいものばかり」とあるが、BL苦手な私でもまったく平気な内容だった。ほとんどは邪推すれば何とか……という程度で、過剰なラブに走ることもなくちゃんと“いつものあとりさん”。もともと男女の恋愛話もほとんど描いてないくらいなのに、レーベルで差別していた私のバカ! 表題作はファン必読の傑作だったのに。「ぶどうの瞳」も可愛かった。
今回あとり作品をまとめ読みしてみて、今更ながらに“死”をテーマにしたものが多いことに気づき愕然とするというか溜め息がでるというか。死は誰にでも訪れるもので、もちろん自分も例外じゃない。そういう事実に私なんかはちゃんと向き合ったこともないが、あとりさんは普段から死について静かに見据えていたのだろうなと思う。あと犬が特にお好きだったんだろうな。とか、ふとした折にあとりさんのことを考えている自分がいる。

『公家侍秘録 壱〜参』高瀬理恵(小学館ビッグコミックス、2000−2003)。
面白い! 江戸時代の京都、貧乏公家の日野西家に仕える青侍・天野守武は「〜どす」「あらしゃります」と京ことばも雅やかに、縫い物から炊事まで一人でこなし(というか他に奉公人がいない)、内職に精を出しては主家の家計を助けるイケメン好青年だ。わがまま勝手なお姫(ひい)さん・薫子に振り回されっぱなしの様子からはとてもお家に代々伝わる宝を守護する凄腕の番人とは見えないのだが、そこが千年の都の奥深さなのだ。いやー、このところ小学館ビッグコミックスは当たりが多くて嬉しいな。