カッコイイ本

東京大学出版会が出している「UP」という広報誌がある。
その最新号(7月号)のリレー書評のページに豊崎由美さんの文章が載っていて驚いた。これはとてもお堅くてアジったりヤジったりとは無縁の雑誌なのだが、豊崎さんはいつもよりさらにカッとんだ調子で『世界の中心で、愛をさけぶ』や『Deep Love アユの物語』を「ダメェーな表層真似っこ小説」「ジャンクな代物」とこき下ろしつつ、“本”が読まれない状況について「東京大学周辺に棲息しておられる超インテリの皆様方におかれましては、そういう認識がちっとはおありなんでございましょうか」などとのっけから挑発しておられるのだ。いつでもどこでも決して自分のスタイルを崩さない豊崎さんこそカッコイイぞ! たとえこのページだけ他の記事どころか雑誌全体のカラーからおそろしく浮いてるとしても。豊崎さんにこの仕事を頼んだ人もある意味すごいぞ! 次回は別の人にバトンタッチなのが残念だな。
そのあとは豊崎さん言うところの「地道な騙り(語りにあらず)」、さすが現代海外文学読みな濃ゆいレビューが続く。ウラジミール・ソローキン『愛』『ロマン』やマーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』がいかにカッコイイかを力説されて、翻訳ものオンチの私も「読んでみようかな」と騙されそうになったほどだ。まあ私は東大とはまったくかかわりのない人間だけれどもね。