かわせみ時空

御宿かわせみ」は連続短編集なので空いた時間に“こまぎれ読み”しやすい。今はちょっと古めの巻を本棚から引っ張り出してきてちょびちょびと読んでいる。『神かくし 御宿かわせみ14』平岩弓枝(文春文庫、1993)では長助親分が香苗のことを弁天様だの観音様だのと崇め奉っていた。こんな昔からだったのか、と思わず笑う。
『酸漿(ほおずき)は殺しの口笛 御宿かわせみ7』(文春文庫、1988)はシリーズの中でも特異な巻で、東吾やかわせみの連中に忍び寄る黒い影、というシチュエーションをずっと引っ張るのである。リアルタイムで読んだときもの凄くハラハラした覚えがあるのだが、この結末ってどうなったんだっけ。あと独身の源さんが得意げに紫蘇餅のうんちくを披露して、東吾に「こんなもので腹をふくらましていやがったのか」とからかわれるくだりが妙に好きだ。
相変わらず適当な順番で読んでいるため頭の中のかわせみ時空がしっちゃかめっちゃかになりつつある。宗太郎と源さんがお嫁さんをもらう回はそれぞれとても気に入っているのだが、いまだめぐり合わないうちに赤ちゃんが生まれて大きくなっていくのがヘンな感じ。祝言をあげるのがどの巻なのか、ちょっとしたロシアンルーレット気分。