読了本

文学賞メッタ斬り!大森望豊崎由美PARCO出版)。
いやー面白かった。歯に衣着せぬメッタ斬りぶりも凄いけど、これだけ好き放題言いたい放題でも痛くない指摘の鋭さと読書量も凄い。ほんとにこの人たちって本が好きなんだな。読んでみたいと思わせる過去の受賞本もたくさん発見したし。文学賞甲子園のくだりはとても白熱していて楽しめた(香川がネタにされてましたね<さきさん)。装丁も楽しい。各章のはじめに表紙のお侍が出てくるたびにヘラッと笑いがこみあげてきてしまった。
でもあんまりテルちゃん(宮本輝)をいじるのはやめてくれ〜。ジュンちゃん(渡辺純一)が揶揄されるときは「もっとやれー」とか思うんだけども、テルちゃんは好きな作家なのでその度に喚きたくなってしまう。日本のおぢの代表みたいにいうのはどうなのよ、そんなに凡百の感性な作家じゃないよ〜、たしかに直木賞にいったほうが合ってるかもしれないが<豊崎さん。キャラが立ってるだけあってエッセイはどれも読ませるし、エンタメひとすじの私でも気に入るようないい作品もけっこうあると思うんだけど……『海辺の扉』とか。といっても最近のはあまり読んでいなかったりして。

『秘密 トップ・シークレット 2』清水玲子白泉社)。
ラストが号泣ものだった。こんなことになるとは思わなかったので。というか、ウィリスの「最期のウィネベーゴ」のときと同じパターンに自分がはまってしまったので。プライバシーを暴かれて困るのは罪の意識のなせるわざ……いや、そこから恥の概念を導き出す人間ならではなのかもしれない。とすると罪を犯している自覚がありながら恥ずかしいと感じない人間って何なんだろう。妖怪? 先祖返り?

『月夜烏草紙 3』及川七生白泉社)。
ものすごく密度は濃いのに、それが苦にならない。丁寧に描かれているからこちらも丁寧に読んでしまうんだろうな。千鶴のほんとうの気持ちがどこにあるのか、作者がどうオチをつけるのか、とても楽しみ。

『レディー・ヴィクトリアン』もとなおこ(秋田書店) 9〜12巻まで読了。
最新刊まで読み終わってしまった。新キャラ・ノエル母さんのその後が気になるのに、コミックス派はつらいなあ。ベルってまだ17歳そこそこなのね。こんなに若いうちからガヴァネスになるものなんだろうか。まだ恋に憧れる年頃の乙女ではあるんだけれど、素敵な男性に囲まれてしじゅうドキドキしっぱなしなのも読んでいて歯がゆい。私はノエルを応援しているぞ。

高天原に神留坐す 1』篠有紀子講談社)。
神社を舞台にした異色の職業もの。「動物のお医者さん」の亜流の域を出ていないのはちょっと辛いけれど、女性神職・ともえを巡る言動にはこちらの背筋を正させるものがあって、続きを読んでみたいとは思う。