読了本

『はなしっぱなし 上』五十嵐大介河出書房新社)。
『そらトびタマシイ』も印象的だったがこの本もしみじみいい(いい、という感覚を言葉で言い表すのはとても難しいね)。作者のものごとの見かたや受け取り方、そして表現の仕方は不思議なまでに非凡だが、誰もが知らないままに知っている懐かしさも感じさせる。心のなかの深い井戸の底まで小石がころころ落ちていって、波紋の起こした余韻がいつまでも暗闇の中に鳴り響いている、そんな雰囲気の短編がたくさん収録されている。「六花」「カワイさんと神鳴り」「虹を織る声」「口から鈴の音するでしょう」あたりが好き。

『ラブ・クラシック 和風ロマンス作品集』比古地朔弥(大田出版)。
どちらかといえば「ぶす」なのに愛嬌のあるお世話係、天真爛漫なご新造さん、若殿に性の手ほどきをする側室、などなど……様々な境遇や性格の女性を描いていやみがない。土臭い淫靡さがたまらないという人もいるだろう。個人的にはヒロインたちのしなやかな強さに惹かれる。『けだもののように』のような強烈な作品でもその魅力は健在だ。この作品集では「しらゆり慕情」が好き。胸がほんわかするね。

のだめカンタービレ 8』二ノ宮知子講談社)。
男子十五楽隊とか花しょって見えるとかの小ネタは面白かった。しかし何だかずいぶん才能のあるキャラばかり集まってきたが「天才ファミリー&カンパニー」と同じパターンにはまりこむんじゃなかろうな。