読了本

クレオパトラの夢』恩田陸双葉社)。
久しぶりに読む恩田本。主人公は『MAZE』などにも登場した女言葉のパワフルなゲイ、恵弥ちゃんだ。よしながふみに漫画化してもらいたいものだなあ。恩田さんも愉しそうに書いてる気がする。そのせいかずいぶんとサクサク読めてしまった。“クレオパトラ”の秘密を探っていく過程はなかなかスリリングで、恩田さん社会派に転向したのか? こんなこと書いて“防衛庁の怖いお兄さん”に目をつけられたりしないのか? と心配してしまったほどだが、ラストは賛否両論分かれそう。もっとブラックなほうが評価も高くなったように思うけれど、私は最近なんだか胃もたれしがちなのでこういう軽めのオチは嫌いじゃない。

『ボタニカル・ライフ 〜植物生活〜』いとうせいこう新潮文庫)。
実は筋金入りのベランダ園芸家(これをベランダーと呼ぶ)だったいとうさんが育てて花を咲かせ、時には枯らした植物どもについての思いを熱く語ったエッセイ。一人称が「俺」なあたり普通の園芸エッセイではまず見られない新しさがある。チャペックの『園芸家12ヶ月』が表なら『ボタニカル・ライフ』は裏、だがどちらにも共通するのは植物にかける愛情の深さ、そして思わず爆笑させられてしまうユーモア感覚の豊かさだ。「ベランダー とりあえず十の掟」は額に入れて飾っておきたいくらい。私も今年の夏はメダカと睡蓮をベランダで育ててみるかな。