読了本

うめ婆行状記

うめ婆行状記

うめ婆行状記/宇江佐真理
市井もので、派手なエピソードがある訳じゃないけれど、めちゃめちゃ面白かった。うめの生き方……さばさばしたものの考え方や、気取らない懐のひろさなど、読んでて気持ちがいい。彼女が置かれた状況や周囲の人々が起こす騒動は必ずしも楽しいものじゃないのに、遠慮なんかせず体当たりでことに当たるうちに何とか乗り越えてしまう。気ままな独り暮らしがしたくて家を出たのに、ほとんど独りになれないのには思わず笑ってしまうが、生きているうちはそういうものなのだろう。連載中に亡くなったので未完の遺作である。この後、どうなったのか気にはなるけれど、それでも立つ鳥跡を濁さず的なすっきりした読後感を残していかれたなあと思う。うめは宇江佐さんの分身だ。