読了本

よこまち余話

よこまち余話

よこまち余話/木内昇
どこか不思議な雰囲気の物語。お針子の齣江とトメさんが住む長屋の人々の日々の暮らしを描きながら、ときどきふっと影がさすというか、異なるものがのぞくのが怖いような、懐かしいような。結局、どうしてそうなったのかは説明されないけれど、なにが起こっていたのかは何となくわかる、そんな描き方で物語は閉じられる。明るいばかりではない、不穏さも感じさせる未来。時代的にいろいろあるのだろう。すこし怖くてさみしい、けれど今はまだ幸せがそこにある。

オークブリッジ邸の笑わない貴婦人 新人メイドと秘密の写真/太田紫織
ごっこ遊びではない、本気のヴィクトリア朝生活。現代の便利さから離れ、慣れぬ階級社会に悩みつつ、ヒロインは十九世紀英国に順応していく。読む前は無理めな設定じゃないのかと思ってたけど、心の底からなりきったその先にあったものが何だかとても感動的だった。東京とかじゃなくて北海道という土地柄もいいのかもな。まあお風呂はちょっとねえ。あと暖房も大目に見て欲しいところではある。いまさら冬になったら中断というわけにもいくまいが……。続編が出るので楽しみだ。