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真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

真実の10メートル手前/米澤穂信
記者・大刀洗万智と事件との関わりを第三者視点から描く連作ミステリ短編集。万智自身が語り手の『王とサーカス』との比較はあとがきでも述べられているが、割とさらりと描かれている本作が深みを増すのは『王とサーカス』があってこそ。にしても最後の短編は、それを疚しいことと捉え、“鬼”とまで言うのにびっくり。これまでが身勝手な大人の話ばかりだったから余計に……(「名を刻む死」の真相には血の気が引いたわ)。万智はこの夫婦の記事をどんなトーンに仕上げたのか、とても気になる。彼らの心の重荷をいささかなりとも取り払ってくれるものだったらよいなあ、と思う。