読了本

ことり屋おけい探鳥双紙

ことり屋おけい探鳥双紙

ことり屋おけい探鳥双紙/梶よう子
う〜ん、面白かったわ〜。傑作というんじゃないが、職人の手仕事って感じの丁寧かつ緻密な話はこびに魅了された。新妻を置いて行方知れずになった夫を待ち続けるおけいの心の変遷をかたずをのんで見守りつつ、市井に起こった鳥がらみの謎をときほぐしていくミステリ展開を楽しんだ。気難しい愛鳥家の先生や、絶妙の合いの手を入れる月丸、心やすらぐ同心の永瀬など、脇役陣もよかった。ラストがまた、ほろ苦くも優しく、芯のある終わり方でしみじみ心に残った。満足。

ディアスと月の誓約

ディアスと月の誓約

ディアスと月の誓約/乾石智子
神話的な世界と中世的な人の営みとのはざまに生まれるドラマを描いたハイファンタジー。ディアスのヒロイックな冒険譚は、なんかもうちょっと移動した距離を感じさせてくれても……と思ったが、精神的な旅路の途方もなさは凄かった。そこにアンローサの乙女的逃避行(肉体的には彼女の方が苦労してたような)が絡むと、えもいわれぬ味わいとなる。ディアスとイェイルの魂の繋がりには神秘的な透明感があるが、アンローサがナナニとの間にはぐくむ絆はウェットで熱い。