読了本

([あ]8-1)鹿乃江さんの左手 (ポプラ文庫 日本文学)

([あ]8-1)鹿乃江さんの左手 (ポプラ文庫 日本文学)

鹿乃江さんの左手/青谷真未
この学校には魔女がいて、生徒の望みをなんでもひとつ叶えてくれる。そんな伝説のある女子高が舞台の連作短編集。瑞々しい感性と癖のない綺麗な文章で、心理描写もあざやか。ファンタジー、ホラー、ミステリの要素もほのかに感じられ、あっさりした読みごこちなのに余韻が残っていつまでも心地よい。これでデビュー作とは。百合成分は普段ならとくに好まないが、この作品に関しては物語世界にしっくり馴染んでいてよかった。シリーズ化してほしいけど、ほかのシチュエーションも読んでみたいと思わせる、この先が楽しみな新人さんだ。

代書屋ミクラ

代書屋ミクラ

代書屋ミクラ/松崎有理
惚れっぽい草食系青年が失恋しつづける話。と言っては身も蓋もないが、一応「代書屋」として成長していくコメディ風味のお仕事ものでもある。けど最後までめちゃめちゃ頼りないよなー。無理だろうまだ独り立ちは。ところでこれSF? 地名はぼやかしてあるけど何はともあれ現代日本、なんではなくてパラレルワールドの日本? だからミクラはMICRAでおじさんはモーリオなの? 前作あがり (創元SF文庫)同様、「百円玉」とすら言わずに「白銅貨」だし。通貨は円じゃないのかも。にしても「オサリバンの店」の麦酒がうまそう。常連になりたや。

パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から/似鳥鶏
直ちゃんに笑わされた。<動物園シリーズ>でいえば服部君だね。結構おもしろかったけど、弟思いのはずの兄がどうして毎回仕方なく、ときには進んで事件の調査に乗り出し、結局弟を巻き込んでしまうのかがよく分からなかった。弟の外見や過去は語られるのに兄については弟の思い出話の中でしか出てこないので、何か仕掛けがあってわざとそうしてるのではと勘ぐってたら特に意味はないようで拍子抜け。あと直ちゃんともうすこし接近するかと思ったのに……! 続編はあるのかな?