読了本

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解錠師/スティーヴ・ハミルトン著、越前敏弥訳
犯罪小説にして青春小説。面白かった。展開はスリリングで、読後感も悪くない。というかここまで明るい未来を予感させて終わるとは思わなかった。幼い頃の体験とその後遺症、犯罪に手を染めてる間に遭った危険のかずかず、檻の中で失われた長い時間のことなどを考慮しても、主人公の支払った代償はいささか軽すぎるような気すらしてしまった。だって白のチームの末路はああだよ? 少年犯罪なので処罰より更生に重きを置いてるということかも。恋人も去らないしさ、話せるようになるのだろうしさ……。いや、もっと罰を受けるべき、罪を悔いて心に重荷を負うべき、と思うわけじゃないんだけど(少しは思ってるけど)。もしこれが鬼平犯科帳だったら、前のようには指が使えないよう腱のいっぽんも斬られてるとこだよ。この特殊技能があるかぎり、出所しても悪の誘いを断ち切ることはできないのがこの手の話のお約束。絵の才能だけで食べていけるようお膳立てしてあげればいいのに作者も、それができるのが小説でしょ、それでこそ文句なしの大団円でしょ……、とかそんなことをいろいろと考えてしまった。