読了本

リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

リヴァイアサン クジラと蒸気機関 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)/スコット・ウエスターフェルド著、小林美幸訳
スチームパンク仮想歴史冒険小説、三部作の1作目。すっごく面白かった! 物語の時代設定は第一次世界大戦になだれ込もうとする1914年夏の史実に基づいているのだけど、各国の軍備は現実とぜんぜん違うものになっている。ドイツではメカニックがやたら発達しててガンダムの世界だし、イギリスでは新たな生命体を発明し兵器に応用していたりする。だからかなり凄惨な場面もあって、個人的にはむしろ苦手なはずなのに、なぜか読んでてあまり嫌な気分にならないのは“ストームウォーカー”や“ビースティ”がただの道具として描かれてないからだろうか。特にデリン・シャープにとって“ビースティ”が戦友であり愛情を注ぐ対象なのがよかった。でもってボーイ・ミーツ・ガール!! そこに至るまでがけっこう長いのだけど、アレックを慰めるデリンの図には思わずニマニマしてしまった。しかもデリンは男装少女なんだぜ。なんという美味しすぎる設定。児童書あるいはライトノベル的な味わいを醸し出す豊富なイラスト群がまた楽しい。作者あとがき、さらに訳者あとがきまでもが、それぞれの人柄がしのばれる感じで面白かった。続きがめちゃめちゃ楽しみ。

恋の手本となりにけり

恋の手本となりにけり

恋の手本となりにけり/永井紗耶子
著者のデビュー作。殺された吉原の花魁の事件を探るため、若き日の遠山金四郎が乗り出す。この金さんは、ほんとうにまっすぐな青年で嫌味がない。狂歌師の太田南畝や絵師の歌川国貞といった渋くて味のある脇役に助けられつつラストまで突き進んでいく。ほろ苦く割り切れないものを残しつつも、金四郎のおかげで読後感は悪くなかった。読み応えは軽めなのでハードカバーよりも文庫描き下ろし時代小説シリーズに向いてると思うがなぁ。