読了本

写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻/島田荘司
歴史ミステリ。……なんだけど、えんえんと続く現代編Iでの主人公の人生転落劇はツラかった。正直「これ、必要?」と思わないでもなかった。でもこの程度の苦労は味わってもらわんと、このすんごい真実は手に入れさせてやらん! と島荘が思っちゃうのも分かる。そのくらい魅力的な説だった。論理のアクロバットのようでいて、資料的な裏付けがちゃんとしてるなら、説明に無理がなくてすっごい自然だもん。伊達にミステリ書いてないよな!と恐れ入った。現代編はともかく、江戸編は小説としても面白かった。おもろいわ江戸っ子たち(笑)。とくにIII章はまるで一生に一度の夜祭りのような熱気にうかされた非日常空間がぶわーっと立ち上がってて、ある意味幻想的ですらあった。こんなに説得力のある歴史ミステリを読んだのはQED 百人一首の呪 (講談社文庫)以来だなぁ。この島荘説、学術的にはどう受け止められてるんだろう。いろいろ消化しきれなかった伏線とかアイデアとかあるみたいだし(謎の肉筆画とか、片桐教授の思惑とか? 佐藤夫婦はどうでもいいなぁ)、蔦屋の工房のその後とかも気になるので、出るかもしれない続編を気長に待ちたいと思う。