読了本

駆込寺蔭始末 (光文社時代小説文庫)

駆込寺蔭始末 (光文社時代小説文庫)

駆込寺蔭始末 新装版/隆慶一郎
鎌倉の縁切り寺を舞台にした連作短編。初版は1990年、もう20年以上前の作品なのにぜんぜん古くなく、キレがあって面白かった! まあ女たちの事情はちょっとアダルトだけど、麿と玉渕尼のやりとりはお花畑みたいに微笑ましくて。この部分だけならほのぼのニヤリングなのに、麿が殺人モードに入ったときのノワール全開な妖しさときたら。尼を困らせ悲しませる者には容赦しない守護天使であり、春風のような死神なのだ。でも別に殺生を好むわけではない。悪い奴らがいるけどどうするか迷うなぁ、顔見て癇に障る奴だったら殺すか……って実際に見てみて「卑しい顔だ。殺。」「意外に悪くない。生。」と仕分けするくだり、こんな場面をサラッとスタイリッシュに書けてしまうのがすごい! 4話しかないけどもっと読みたかった。作者が故人なのが寂しい。