読了本
- 作者: 中島京子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/05/01
- メディア: ハードカバー
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かつて東京の山の手で女中奉公をしていたタキ。後年、若かりし頃の思い出話として綴られていくのは平穏かつ幸福な日々だったが、何故かときどき苦悩の影がひらめくのだった……。読んでる間じゅうずっとケイト・モートン『リヴァトン館』asin:4270005424を思い出していた。“戦前・戦中”の“いいとこのお宅”の日常にはどこかのどかな浮世離れした雰囲気が漂っていて、ゴシックサスペンス色はぜんぜんないのだけど、女主人とメイドの親密な関係にはとっても近いものがある。ただ舞台と時代が違うと、こうなるのかなぁ……となんだか感慨深かった。最終章のミステリっぽい仕掛けはいかにも中島さんらしい。いろいろ伏線が仕込まれていておおっと思った。ラストで明かされる秘密は、とうぜんタキはそうするだろうと思ったらしてなくて、奥様が賭けに勝ったけど関係は清算された……のだと思っていたので「あれっ?」と読み返したら、その空行のあいだに1日経ってるのね(こういう読みこぼしを私はたまにやってしまう。急いで読みすぎなんだろか)。でもたぶん奥様はタキが何をしたか分かっていて、再会したときにはすべて許していたんだろうな。だからこそ、タキは後悔に苛まれ続けていた……いや、ずっと胸の奥にしまいこんで忘れていた、つもりだった、のかもしれないが、今となってはもう分からないのだ。