読了本

よろずのことに気をつけよ

よろずのことに気をつけよ

よろずのことに気をつけよ川瀬七緒
江戸川乱歩賞受賞作。面白かった。小説的、ミステリ的に行き届かない部分がないわけではないが、もうちょっとこう……という欲がでるくらいには完成度の高い作品だったと思う。文章も癖はないのにセンスが感じられる。なにより私はこういうネタが大好きなのでホクホクしてしまった。だってヤング小松和彦の事件ファイル、みたいな話なんだよ。幽霊の出てこない『悪霊と呼ばないで』asin:4840142459みたいな話なんだよ! キャラクターも脇にいたるまで魅力的だった。寸評で京極夏彦さんが“致命的な誤謬”についてコメントしていたけど、やっぱり呪いとか得意分野のことなんだろうか。素人にはどうせ分からないからハッタリが利いてればよしと思ってしまうけども、どのへんがそうなのかはちょっと気になるなぁ。ふだん「つまらない本などない」と言ってる京極さんも、そこらへんは譲れないらしく辛めの評価。出版の際に直したりとかしてあるのかね? しかし経歴みるとぜんぜん民俗学とかとは接点ないみたいなのにすごいな。次作もこういうの書いてくれると嬉しいのだが。仲澤先生でシリーズ化か、でなきゃ湯山のスピンオフとか。