読了本

萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)

萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)

萩を揺らす雨 紅雲町珈琲屋こよみ/吉永南央
ほのぼの、というにはちょっとビターな人情ミステリ、シリーズ1作目。お年寄りが探偵役になることは結構あるが、わりと皆さんバイタリティのある人ばかりか、または頭脳明晰な安楽椅子探偵か。この物語の主人公・草(そう)さんは、足腰は達者だし知的な女性だが、日々老いの現実をつきつけられている。読んでてしばしば、ふっと哀しい気持ちに襲われる。けれどそれで萎れかえるほど弱い人ではない。道端の草のように控えめでしなやかな草さんは、ときに胸の痛みに耐えることになっても「日常の謎」を見過ごせないのだった。たまにはこういうのも面白いなぁ。