読了本

菊月の香―蕎麦売り平次郎人情帖 (文庫小説時代)

菊月の香―蕎麦売り平次郎人情帖 (文庫小説時代)

菊月の香 蕎麦売り平次郎人情帖/千野隆司
シリーズ第2弾。巻を重ねるごとに面白くなってきた。それぞれの登場人物の個性が固まってきて、ドラマに厚みが出てきた感じ。お舟の意外な一面が描かれる「おん富一番」、物貰いの丑にスポットライトが当たる「月の岬」、表題作は亡き娘の婿になるはずだった北原とタッグを組んでの捕物話だったが、いずれもなかなかよかった。「おん富一番」がいちばん好きかな。毎回、食べ物ネタがちらっと絡むのがニクいね。

霜夜のなごり 蕎麦売り平次郎人情帖/千野隆司
シリーズ第3弾。今まででいちばん面白かった。方向性も固まってきたのかな。表題作はちょっと涙ぐんじゃったよ。どうなるのかハラハラしたし。いつも探索の筋道が描かれるんだけど、ちょっとサクサク行きすぎかなと感じるところはある。まあでもたぶん読みやすさを重視してるのだろう。私はこういう地道な描写が好きだけど、そうじゃない人のほうが多いのだろうし。それにしても長屋の連中はすっかり捕物の手伝いにハマっちゃってるね。平次郎にしても、現役の時より働いてるのでは(笑)。食べ物ネタもただ色を添えるだけじゃなくて、かなり重要な小道具になってきてるのは嬉しい。玉子貝焼にしろあく巻きにしろ、描写に想いがこもってて妙に胸にしみじみくる。あとは繍とのことがどうなるか、かなぁ……亡き奥さんにもうちょっと済まなさそうにしてほしいぞ!