読了本

深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)

深川澪通り木戸番小屋 (講談社文庫)

深川澪通り木戸番小屋/北原亞以子
さいきん新作が出たらしいこのシリーズもすでに5作目という。最初の何巻かは読んだっけなぁ……と懐かしくなり、1巻から読み返すつもりで文庫版を手に取ったら内容にまったく覚えがない。読んでないじゃん! と自分で自分につっこんだ。読んでたのはたぶん「慶次郎縁側日記」のほう。シリーズが続くにつれ(もう十作を超えたようだ)追い切れなくなってしまったのだが、それでも北原さんは好きな作家のひとりで、単品でもいくつか読んではいる。
このシリーズは市井ものの連作短編。しっとり落ち着いた筆致がささくれだった心をなだめてくれるようで快い。実力のあるベテラン作家の文章には安心して身を委ねていられるよねぇ。登場するのはあまり裕福でなく生活に疲れていたり、肉親の情に恵まれず寂しかったりする人々ばかりだけれども、かなりギリギリのところに追い詰められても軸がぶれたりしないというか、芯が通っているのが清々しい。木戸番小屋の老夫婦、笑兵衛とお捨はもう結構な歳だけれど、5作も続いてるうちにどうなったのかな? 続きも読んでいこうと思う。