読了本

出世花 (祥伝社文庫)

出世花 (祥伝社文庫)

出世花/高田郁
死者に湯灌をほどこす“三昧聖”となった娘・お縁の物語。作者の時代小説デビュー作だが、完成度が高くとても読みごたえがあった。にしても2日続けて涙腺にくるもん読んでもーたわ……。こちらは人の死を直接取り扱うがためにやや刺激の強いくだりもある。でも筆から滲み出る女性らしい心遣いがそれを柔らかく覆っている。帯の「江戸時代の『おくりびと』」はうまいたとえだ。連作短編なのだが、回によって微妙に雰囲気が違うのが面白かった。中ふたつは同心が出てきて捕物帳っぽいしね。展開は「偽り時雨」が特によかったけれど、登場人物の内面描写が好きなのはラストの「見送り坂暮色」。
解説に時代小説以前の仕事のことがかいつまんで書かれており、知らなかったのでへーと思った。こうなると著者の現代ものも読んでみたいな。