読了本

ほこりまみれの兄弟

ほこりまみれの兄弟

ほこりまみれの兄弟/ローズマリー・サトクリフ著、乾侑美子訳
サトクリフが現代ものとは珍しい、と思ったら16世紀の話だった。でもいつもは紀元前とかだから……(^^;。孤児の少年は愛犬と鉢植えの花(これだけが財産。泣ける)をつれて意地悪な親戚のもとから逃げ出した。学問の都オクスフォードを目指すつもりが、旅芸人の一座と出会ったことで新たな暮らしが幕を開ける。ヒューが孤児だとか貧乏だとかいうことで誇りを失わなかったのはペニフェザー一座のおかげだよなあ。この先どんなことがあろうとも、彼らがくれた“宝”は一生目減りすることはない。全編にちりばめられた緑や花々の描写の瑞々しさは「辛いことはたくさんあるけれど、世界はこんなにも美しい」という作者の思いのあらわれのような気がする。それにしてもアルゴス失踪のくだりは恐ろしかった。我慢できずに頁をめくって先の展開を確かめてしまったよ!