読了本

RDG(レッドデータガール)3 夏休みの過ごしかた/荻原規子
シリーズ第3巻。これまででいちばん楽しめたかもしれない。ひとつには筋金入りの箱入り娘である泉水子の浮世離れした性格と行動に慣れてきたうえ、いろいろと成長しつつある彼女にだんだん親しみを覚えるようになった……というのがある。深行をはじめ佐和さんや両国先輩などにも自分の意見を言ったりできるようになったし、姫神のことも受身なばかりじゃなく自分のこととして考えはじめたし。状況に流されないで自分で決断できるようになったら一人前だものね。また植芝理一絵で脳内マンガ化して萌えるひそかなお楽しみもある(笑)。
もうひとつは、校外合宿というイレギュラーな状況がかえって「学園もの」らしさを醸し出していたということ。2巻を読んだとき、なんか妙な感じだなぁと首をかしげていたんだけど、あれって高校生活を描いた「学園もの」のようでいて、実は鳳城学園という特異な場における「宮廷もの」色が濃かったのが違和感のもとだったのかなと今は思う。普段はいがみあっていてもいざとなれば団結するのが学園もの、敵と味方が入り乱れて策謀をめぐらし蹴落としあうのが宮廷ものの特徴……なんて思うのだが、そういう意味では鳳城学園は限りなく「宮廷に近い学園」だ。この巻では生徒会にしろ日本史研究会にしろ宗田兄弟にしろ深行にしろ、対立が薄れて少年少女間の横の繋がりが太く育っていく感じがあって、そうこなくっちゃと思わずわくわくした。あと、何といっても戸隠には雪政が来られないってのがいいネ! あの人グインサーガでいったらナリス様みたいなキャラだからちょっと苦手なんだ……。
戸隠が“別の層”とナチュラルに重なり合う土地だったように、登場人物たちの日常会話に隠された意味がある、というか、いまだ読者には説明されず意味の通じない会話が平然となされる(笑)のが世界に謎めいた奥行きを与えていて、そこが私にはすごく面白かった。泉水子もみそっかすのようでいて実は普通の子じゃないから、真澄関連とかで異変があってもサラッと流したり受け入れたりする。「あの、相楽くん、羽はえていない……?」って、一般人なら普通もっと慌てるでしょ(笑)。泉水子視点で読んでいると、ときたま彼女の異質な感覚にふれてゾクッとなるのがたまらん。クライマックスも「そうきたか!」って感じで盛り上がることこのうえなかった。さすが荻原さんはこういう古代史がらみのネタを使うのがうまいね。
次の巻では学園祭がはじまるのかな? 戦国がテーマなだけに権謀術数うずまく宮廷モードが復活するのかしら。高柳とか影の生徒会長とかも暗躍しそうだし、宗田兄弟は新生真澄を受け入れるのか、徐々に近づいてきた泉水子と深行の距離がまたぞろ雪政の介入で遠ざかるのか、ってあたりも気になる。