読了本

命もいらず名もいらず 下 明治篇

命もいらず名もいらず 下 明治篇

命もいらず名もいらず(下)明治篇/山本兼一
維新にあたっては徳川家のために奔走し、明治になれば任命されるままなんでもやった鉄舟(植物御苑掛とか、なんでもかんでもやらせすぎ<新政府)。あまりにも器が大きくて、「こういう人だ!」とひと言では語れない。自分で何かをなしとげようという野心がなく、むしろ他人の野心を助ける側にまわるのを好んだみたい。で、誰かが揉め事や厄介ごとを起こせば出て行って一生懸命かたづけるけれど、それ以外はひたすら剣と禅の道に励み、酒を酌み交わしながら人々と語らい、書に没頭する日々。つねに一般人ばなれした濃さなのであんまり起伏がなかったように感じてしまう……そんな生涯を描いた小説も、全編が山場すぎてやけに淡々とした印象を与えるのだった。若き明治天皇に侍従として仕えたエピソードがうるわしくも面白かったな。陛下、素直でいらっしゃる。ところで谷中の全生庵って鉄舟が立てた寺なんだねぇ。