読了本

冥談 (幽BOOKS)

冥談 (幽BOOKS)

端正な雰囲気の怪談集。紫でまとめられたシックな装丁と良く合っている。さらに移動する柱とノンブルがうごめく虫のような不気味さを醸し出していておもしろ怖い。
「冬」の「はなしかけるともっていくぞ」が忘れがたい。こんな、怪異なのか夢なのか判別しがたい体験のひとつやふたつ誰しもが持っているかも知れず……実は私にだってあるが、他人に話してもどこに味があるんだと言われそうだから黙っているのだ。でもそういうのを面白く、読ませるように書けるところが京極さんの力量なんだろうな。「遠野物語より」もよかったが、ラストの「先輩の話」が京極さんらしからぬ(と言っては何だが)いい話で……ええい、泣かされちまったじゃないかっ。