読了本

船に乗れ! (3)

船に乗れ! (3)

船に乗れ!3/藤谷治
最終巻。演奏シーン、とくにコンサート本番はさすがの迫力でとても面白く読ませるんだけれど、金窪先生のことはいったいいつ決着をつけるんだ? と気になっていまひとつのめり込めなかった。でも最後に来たねえ……。
やはり主人公の「やったこと」は生涯許されない。当然だ。ただ先生は、そういうことをやってしまった「彼のこと」はとうに許していたのだろうな。主人公は許されないことをやった事実を生涯背負い続ける。やってしまえば帳消しにはできないからだ。音楽をやめた直接の原因ではなくても、罪の自覚は彼の無邪気さをゆるがし、結果的に音楽に対する情熱を奪ったのだろう。先生がそれを望んでいなくとも。
じゃあ謝罪が無意味かというとそうではなく、二度としないという決意表明みたいなものでもあるんじゃないだろうか。「あれ」は「やってはいけない、許されないことだった」という共通認識が当事者ふたりの間に成り立ってはじめて、凍りついていた時が流れ始めるのだから。
それは南と主人公の間にも言えることで――繋がりはもう修復されないにせよ、それぞれに人生を歩んでいくうえで、足にまとわりつく重りを逞しい筋肉に変えるためには過ちを認め許しを乞う勇気が不可欠だったのだと思う。いちど壊し、傷をつけることでさらに強くなるものもあるのだ。
そういう意味では、主人公が音楽から離れてしまったことはもったいなかったし残念でならなかった。でもまあ、おじいさまもこだわっていなかったし、彼なりに苦労はしただろうし、いいかなと。それにしても伊藤くんは報われない……が、それすらも彼の才能を磨く材料にはなったのかもしれない。
いろいろやきもきさせられたけれど、この本を読めてよかったなと思う。


だから、楽に走れない! 目からウロコのマラソン完走新常識 (じっぴコンパクト新書)

だから、楽に走れない! 目からウロコのマラソン完走新常識 (じっぴコンパクト新書)

目からウロコのマラソン完走新常識/飯野潔、牧野仁
シューズやインソールの解説にページが多く割かれているのが特徴。著者が専門ショップの人なんだな。テコの原理による楽な階段の登り方は試してみたらホントに楽なんでびっくりした。
私はいまキロ7分くらいが楽に走れるペース。レースに出るならかなり遅いけれど、まだしばらくはストイックにトレーニングを積んだりしなくてもいいかなと思っている。早く走れるようになればそれはそれで嬉しいけどね。今は、猫を見つけて忍び足で寄って行き、路地に入り込んで迷い、坂道を嬉々として登り、道祖神や石仏などに出会えばしばらく眺め、川岸の桜並木が早く花をつけないかなあと心待ちにする、そんなジョギングの日々です。