読了本

ロスト・トレイン

ロスト・トレイン

ロスト・トレイン/中村弦
行方不明の知人を探すため、主人公たちは手がかりを「まぼろし廃線跡」に求めるが、調査は難航する……。
描きようによってはもっとホラーっぽくなってもいいところを、語り手である主人公の草食系な性格が反映されたか、ぼんやりした不安感と懐かしさをともなう鉄道幻想小説になっている。「愛はすべてに打ち勝つ」なんてオチにならないのはよかったものの、主人公のとほーもない弱腰もどうかと思うぞ。菜月さんも同情から「ほんとうに行きたいところ」をたがえてはダメだよねぇ。彼女はむしろ平間さんのほうに惹かれていたのだろうし。じゃあ行ってしまえばよかったのかというと、難しいところだ。ともあれ体の中を機関車が通過していくくだり、テツなら「あんな体験してみたい!」と思うのではないだろうか。