読了本

永遠の0 (ゼロ)

永遠の0 (ゼロ)

永遠の0/百田尚樹
海軍に入り終戦間際に戦死したという祖父の話を聞くため、姉弟は戦争を生き残った人々を訪ね歩く。「生きて家族の元へ帰る」ことだけを考え、凄腕の零戦乗りとして修羅場をくぐってきた祖父はなぜ特攻に行ったのか……?
百田さんのデビュー作(去年、文庫asin:406276413Xになったのね)。いやー、すごいわ。私は『風の中のマリア』→『BOX!』と来てこれを読んだけど、どれも同じ作家が書いてるとは思えないほどカラーが違う。けど、物語にいっぽん通った背骨はみな共通してて、やっぱり百田作品はすごいとあらためて感嘆の念が沸き起こってきた。
太平洋戦争がテーマなだけに語られる内容は悲惨だ。ガダルカナルのくだりを読んだときはしばらく眠れなかった。当時の軍部のおろかさ、人命軽視の風潮はくり返し書かれる。そういう部分の筆致はたいへんクールで、ヒステリックさは微塵もないのだが、人と人との交流や魂のふれあいには本物以上の熱さ、ぬくもりが感じられる。そのへんのバランス感覚が「巧い!」と思う。
決して戦争や人の生死を面白おかしく書いてるわけじゃないのに、物語にはエンタメとしての面白さがちゃんとある。「あの戦争はなんだったのか」という問いに対する答えも真摯で説得力がある。さらに最後には驚きの真相が待っていて……。ちょっと『壬生義士伝』とダブるところもあるが、近くて遠い戦争の記憶を伝えるためにも多くの人に読んでもらいたい一冊だ。
余談だが、読んでる途中でひと息つこうと「探偵!ナイトスクープ」観てたらラストのテロップに百田さんの名前が出てきて、あまりのタイミングのよさに呆然となってしまった。ホントにカラーが違いすぎる!