読了本

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (100周年書き下ろし)

母親を殺めて姿を消したかつての親友チエミ。みずほには彼女を捜さなければならない訳があった――。すっぱりザックリと見えない刃に切り裂かれ続けるような痛い話で震え上がってしまった。とはいえその細やかなリアルさが女って怖い、では終らずちゃんとエンタテインメントになってるのはさすが。様々なスタンス、ポリシーの人物が登場するけれど、どのキャラに対しても過剰に突き放したり見下したりするようなところがないのがすごいなと思う。大地にですらそうだもんな。
視点を変えてきた第二部の展開はちょっと安直に感じてしまったが、それは私がみずほ側の人間だからなのか、チエミに対する同属嫌悪のせいなのか。たぶん両方かもしれない。でもやっぱり最後のあの叫びはないわ……。にしても、それぞれの母娘関係がいつしか逆転してしまったのは皮肉だな。最初から消耗しあっていたからこそ鍛えられたともいえるし、ぬるま湯のなかで楽していたがためにツケが回ってきたともいえるし。ずっと仲良く平和なのが一番いいが、なかなかそうはいかないものだ。