読了本

家、家にあらず (集英社文庫)

家、家にあらず (集英社文庫)

八丁堀同心の娘・瑞江は奇妙ななりゆきから大名家の奥御殿に奉公することになったのだが、その「女の城」にはある秘密が隠されていて……。さまざまな人物の視点を渡り歩きながら徐々に真相に迫る群像劇スタイルの時代ミステリ。はからずも似たようなつくりの作品を続けて読んでしまったが、こちらのほうが緻密で面白かったな。終盤の盛り上がりと緊迫感にはページから目が離せなくなってしまった。慣れない世界で苦労しつつも泣き言をいったりせずいつも強気な瑞江もよかった。
解説の杉江松恋さんがこの作品を“ゴシック・ロマンス・ジャパネスク”と呼んだのにはなるほどと納得させられた。古いお城の代わりに大名屋敷、メイドの代わりに奥女中なわけだ。なにより閉ざされた空間の底知れぬ暗い雰囲気が共通してるよな。それにしてもあの百合エロパートはいったい誰の視点?!というのが気になりすぎた(^^;。ひっかけなんだろうなとは思っていたけど最後まで明らかにならないんだもの。