読了本

運命の騎士 (岩波少年文庫)

運命の騎士 (岩波少年文庫)

わーい、やっと岩波少年文庫に入った! 11世紀、ノルマン人によるイギリス征服の時代を舞台に、ふたりの少年の友情を描いた歴史ロマン。何でこうサトクリフは見て来たように、また実際に体験したことのように書けるのかと不思議でならない。それくらい描写が濃密で生命力にあふれている。文章は固めだけれどむしろそこがいい。
孤児ランダルが暮らすことになったのどかな荘園は否応なしに戦いの渦へと巻き込まれていくのだけど、読んでるこちらもかつての幸福感といまの喪失感で胸がいっぱいになる。犬の描き方がまたうまいんだなー。ジョワイユーズが「もはやよろこびにみちてはいない」くだりで思わず泣いてしまった。途中のギセラとのラブコメ展開にはにやにやしまくり(ギセラがくれたマンネンロウの枝って、ローズマリーのことでいいんだよね?)。
岩波から出てるサトクリフ作品のなかではいちばん好き。ローマン・ブリテンシリーズと直接の関係はないのでこれ単品で読めます。


予想以上に早く出たなあ! 11月くらいかと思ってたので驚くやら嬉しいやら。きりっとしてても朴念仁な蛍の宮、優しげなのに天然タラシな次郎君の異母兄弟が好対照で楽しい。まあでも宮子とどうにかなるということはないと思うんだけどね……。有子姫も真幸とフラグたてまくりだけど、これは読者をまどわすためのフェイクだと思う。私はやっぱり宮子・真幸エンドいちおしです。
ただあとがきでも触れてたように、かなり詰め込みすぎな感じ。終盤はもー、まくるまくる! バタバタバタッと終ってしまって余韻も何もなく……いや、ないとは言わないが(炎上シーンの幻想性はよかった)、いつもよりもいささか粗い印象でもったいないなぁと思った。キャラ多いのにページ足りなくて苦労したんだろうなー、と読者に思わせてはいけないでしょう。
円はどうしたのかとか(山吹殿でお宝探索中?)、有子姫の素性をさぐった斎の思惑とか、文殊丸とか、伏線の拾い忘れというより次巻への持ち越しになったのだろうが、積み残しが多いように感じられてすっきりしない。あと宮子の頑張りが徒労に帰しただけならともかく、次郎君や蛍の宮の助太刀も無になってしまったのはなー。宮子側と馨子側、それぞれが探り出した事実を合わせないと真実に辿りつかないというんであれば2ルートに別れた意味もあったろうし気分も盛り上がったのに。
仕込み的にもこれを中編にしてもう1巻増やすくらいでちょうどよかったのでは? 期待値が高いからどうしても点が辛くなるんだよね……。次は3倍面白い、なんて自らハードルあげて大丈夫か?! とも思うけど松田さんならやってくれるはず。だから編集部は時間とページの余裕をあげて欲しい。ところでイラストの四位さんが描きたかったのに指定がなくて涙を呑んだシーンとは、アレだろうなやっぱり。宮子が見られなかったやつ。