読了本

実さえ花さえ

実さえ花さえ

江戸の花師夫婦を主人公にした市井もの。苗を育てて売り、新種も作る花師の仕事ぶりが園芸好きとしてはとても好ましかった。デビュー作だそうで、場面転換に少々わかりにくい箇所があったりはしたものの、いい話だった。当時の生活や時代風俗もよく調べてある。こういう端正な作風の書き手の登場は嬉しい。もとは莫連で今は大工の嬶のお袖が好きだった。それと霧島屋の理世、もし彼女が主人公だったらまた違った雰囲気の話になっていただろうなあ。もうちょっと新次とおりんのその後を読みたかったのだけど、あっさり幕を引かれてしまったのが残念。