読了本

赤い月―マヒナ・ウラ

赤い月―マヒナ・ウラ

時は1915年のホノルル。現在はダイヤモンドヘッドと呼ばれるレアヒの海岸で、富豪の美しき後妻・濱田リヨが謎の転落死を遂げた。……と書くとサスペンスものっぽいが、物語の雰囲気はどこか牧歌的かつ端正な感じ。連作短編の形で事件の謎を解いていき、最後のさいごで登場人物にも読者にもいちばん気になっていた謎の真相が明らかになる。明智探偵と小林少年よろしく活躍する磯次郎と直吉のコンビがとてもいい。
森福さんは現代物も書けば中国歴史ものも達者なのに、今度はハワイ移民ものとは、引き出しの多い作家さんだなあ。オアフ島全域を巻き込んだという大同盟罷業(ストライキ)がテーマの「羽のない鳥 〜ヘ・マヌ・フル・オレ」が特に面白かった。綺麗に終っているので続編はないだろうけど、磯次郎のその後を書いた歴史ミステリとか書いてくれないかなあ。