読了本

鬼の跫音

鬼の跫音

ホラー短編集。道尾さんらしい技巧の凝らされた逸品ばかりで面白かった。何もかも説明つけてしまわず、あえて書かない部分を残してある。「鈴虫」の声しかり「冬の鬼」の囁きしかり「悪意の顔」の床下しかり……。読者の知りたい“欲”を潤してくれず、“乾き”としての不快感がいつまでも後をひくから却って心に残る。「犭(ケモノ)」には驚いて最初から読み直してしまった。怖さでいえば、いちばん怖かったのは表紙ですかね……。書影をじっと見てると何だかゾッとしてくる。