読了本

海王〈下〉

海王〈下〉

戦国武将オールスター豪華勢ぞろいの伝奇ロマン、閉幕。ただ有名人を出すだけじゃなくてちゃんと見せ場を作ってから退場させる手際がちょっともったいなく感じるくらいに鮮やかで潔い。狂戦士・熊鷹との最終決戦はものすごい迫力で、陰惨なのに荘厳な結末を迎えたのが忘れがたい。歴史ものとしてのみならず伝奇ものとしてのクライマックスもしっかり用意されてるあたり、宮本さんは読者へのサービス精神たっぷりだなあと思った。
ただせっかくハイワンやら兵庫やらの若い好漢が揃っているのにまったくロマンス色がなかった(濡れ場はありましたが)のは個人的に唯一不満な点かも。男女の情愛という面に関しては全体的にとってもニヒリスティックな、刹那的かつ乾いた感じに描かれていた。ちょっと恋愛っぽかったのが善鬼と和邇かなあ……恋というより欲得ずくだったみたいだけども、和邇のほうがより本気だったんじゃないかなという気がする。善鬼って可哀想なやつだから。で、もっとそれっぽかったのが八雲と水天だが、こちらはほとんど1行で片付けられてしまった。もうちょっと色をつけてくれてもいいのに!
まあハイワンが将軍の遺児というくびきから逃れて思うままに天稟を発揮できるのもこれからなので、できれば彼らのその後、世界の海を股にかけての活躍を描いた破天荒な冒険活劇を期待したい……んだけど、もうないかなあ続編は。できればそろそろ義輝抜きで、ハイワン個人の魅力に引っぱられていく自由な物語を読んでみたかったんだよね。いつも愛すべき剽軽さで、重くなりがちな物語のよい口直しになっていたあご十郎とのコンビプレイももっと見せて欲しかったし。
あーでもめっちゃ面白かった……さあ『剣豪将軍義輝』再読するかな!