読了本

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか (新潮文庫)

「坊っちゃん」はなぜ市電の技術者になったか (新潮文庫)

ある作品を読んで面白かったと満足すると、その作品を目を皿のようにして読み返し、作者が書いてくれなかったこと、ちらとだけ書いてやめてしまったことなどをほじくり返して、もう一度別の、あるいは裏の物語をでっち上げたくなるのが、わたしのくせなのだ。

上記の「くせ」に共感する人には特におすすめの一冊。ミステリ的な味わいを持つ軽妙なエッセイで、日本文学や鉄道に詳しくなくても楽しめる。そこはかとなくユーモアを感じさせながら品のある文章も気持ちよい。「蜜柑はなぜ二等車の窓から投げられたか」「銀河鉄道軽便鉄道であったのか」が面白かった。名作の裏にそんなドラマがあったとは……。有栖川有栖の鉄道ミステリ・ライブラリー (角川文庫)に本作から1篇を収録した縁で有栖川有栖が解説を書いている。田山花袋少女病」には私も驚いた! 『鉄道愛 日本篇』もさっそく読もう。