読了本

こいわらい

こいわらい

このタイトルでこの装丁なら“恋笑い”、今風のラブストーリーかと思ってしまうところだが違うのだ。これは遠く戦国時代から続いた京の名家に伝えられ、今は失われた秘剣“こいわらい”を復元することに命を懸けた娘と男たちの闘いの物語なのである。熱いけどクールで、ものすごく面白かった。文章もいいし、京女のヒロインをはじめキャラもみな魅力的。ちなみにヒロインの武器は5歳のときに河原で拾った“棒”で、それが彼女の運命の導き手となる。
剣豪ものではよく内なる野生を目覚めさせたり獣になったりすることで強くなるけれど、この話のヒロインは事故でからだの動きを司る小脳を失ってしまう。なので獣になりようがない。そもそも獣は武器を持たないのだから、剣士に必要なのは本能ではなく“こころ”なのではないか? というのに新しさを感じる。クライマックスにはマジで痺れた……。これがデビュー作だなんて、今後のことを考えると嬉しすぎて笑いがもれてしまうなあ。次作が待ち遠しい。