読了本

藤沢周平 父の周辺

藤沢周平 父の周辺

可愛い表紙だなあ。しかも内容とぴったり。これ素材は京友禅(「桜色地雪だるま」昭和28年)なんだそうだ。中身は藤沢周平の愛娘・展子さんのエッセイで、ほのぼのユーモラスな逸話がいっぱい詰まっている。とにかく家族の皆さん三人三様に面白い、とかいったら失礼かもしれないが、いちばん笑わせてもらったのは奥さんいわく「あああの人は変人と言われたくないために、涙ぐましい努力をしているのだ、などと善意に解釈していました」のくだり。藤沢さんの「おーい。きりんちゃんだよー」も微笑ましいし、娘さんのカーリーヘア騒動もおかしかった。なのにときどき知らないうちに涙ぐんでる私……。
藤沢さんが最初の奥さんを病で亡くし乳飲み子を抱えて悲嘆にくれたこと、後妻として入った方がとても“できた人”だったことは聞いていたけど、こういう家庭環境からあの作品群は生まれたんだなと妙に腑に落ちた。小菅家の日常はそのまま藤沢周平の描く作品世界みたいなんだもの。読み始めてすぐ展子さんて「立花登シリーズ」に出てくるおきゃんな娘・お千絵にそっくりと思っていたが、やっぱり彼女がモデルだったか。