読了本

QED 百人一首の呪 (講談社文庫) QED 六歌仙の暗号 (講談社文庫) QED 東照宮の怨 (講談社ノベルス)
QED 百人一首の呪』高田崇史講談社文庫、2002)。
正月に百人一首どころか坊主めくりですらやらなくなって久しいな……という感傷からふと手にとったこの本、面白くて徹夜で読んでしまった。講談社ノベルズとして出たとき(1998年)に、もっとキワモノっぽい話かと思い込んでまったく眼中になかったのが悔やまれる。扱っている題材がなんといっても好みだ。文章が読みやすく、嫌味のないキャラ設定も好感度大。似たような方向性の作家に京極夏彦がいるけれど、高田崇史はさほど濃厚ではなく、コクがありながらもサラッとした味わい。しかも美味しそうなカクテルをかぱかぱ飲みながら謎解きするんだよな〜。読んでて思わず喉が鳴る。
百人一首のことは私もかねてから不思議に思っていた。なんでこんなパッとしない歌がいくつも入ってるんだろうとか、言葉の重複(朝ぼらけ、みをつくし、わが衣手は〜に〜つつ等々)がやたら多いとか。百首しかないんだからなるべく重ならないように選びそうなものなのに。でもそこがミソだったのだね。巻末ふろく?をコピーし、ホントに繋がってるのかマーカーとボールペン片手に検証してみたところ、ぎっしりみっしりと伸びるシナプスに呆然となった。うわー……すごいよ定家も高田崇史も。躬恒の白菊の歌には悩まされたがしまいには繋がりを見つけられた。ちょっと嬉しかった。学生時代に百人一首に苦しめられた人にこそオススメしたい。

QED 六歌仙の暗号』高田崇史講談社文庫、2003)。
クワバラ・タタルこと桑原崇いきつけのバー「カル・デ・サック」で出されるカクテルに舌鼓を打ちつつ、七福神六歌仙の不思議について夜が更けるまで語りつくす。なんかもう殺人事件は起こらなくてもいいや、とすら思ってしまうほど歴史の謎解き部分が面白い。京都に確かめに行きたくなる。そのいっぽうで肝心の事件の謎のほうはいささか物足りない気がする。岩築警部は好きだし、豊富な医学的知識が駆使されているところは目新しいのだが、取って付けたようにも感じてしまう。とくに“気の毒に”というダイイング・メッセージの意味はなあ……現実の殺人事件に歴史の因縁が侵食してくるのはちょっと気に入らなかった。

QED 東照宮の怨』高田崇史講談社ノベルズ、2001)。
文句を言いつつも面白いことは面白いのでシリーズを読破するつもり。今回のテーマは東照宮である。日光には大昔、中学生のときに修学旅行で行った。当時は左甚五郎の彫刻が主な興味の対象でタタルのような見方があるとは思いもよらなかった。この本を観光案内がわりにまた旅行してみたいものだ。キャラがだんだん立ってきたようで、何か薀蓄を披露しろとタタルをせっつく悪友の小松崎やオペラファンの変態上司・外嶋がとても面白い。ミステリ部分に関しては、六歌仙のときと同じ印象がさらに強まった感じで残念。